教師と生徒。ここには完全な力関係がある。
内申という切り札がある。嫌いだからといって小さな反抗くらいでは太刀打ちなんてできない。
「山口、どうして予習をしてこないの」
「山口、どうして復習をしないの」
「山口、こんなことも答えられなくて悔しくないの?」
最悪だ。健斗はますます馬鹿にしてくるだろう。洋子は呆れているだろう。悟は、まぁもうなんだっていいや。
指される度、いつも晃は伸びた身長分、高い位置でうなだれる。
定期テストでは四十五点を十五点と採点ミスをされた。どちらの点数も点数だが、訂正してもらわないわけにもいかない。晃は教員室に友達がいないことを確認して沼山の席に近づく。
「すみません、採点ミスです。点数書き直してください」
人目をはばかるようにモソモソと答案を出すと、沼山は大きな声で聞き直す。
「はっきり言いなさい、なあに? この十五点が間違ってるの? どれ」
沼山は晃の答案をひったくるように手に持った。
「十五点から四十五点に昇格ね。でも君ね、四十五点なんて、まだまだダメじゃないの。やればできる子なんだから君は。平均点は何点だった? 四十五点じゃ恥ずかしいでしょ」
沼山の声は大きい。そこに同級生が数人入ってくる。