【前回の記事を読む】勉強以外に情熱を注ぎ、自分の「存在意義」を見いだしてきた晃。「勉強以外だろ?」その一言で、心が静かに崩れた。

2 中学生

ポスター表彰

さらに晃を辛くさせたのは、この時をきっかけに、洋子と健斗、悟の距離が一気に近くなったように見えることだった。

今まで立ち話なんかしなかったのに普通に三人で話していたり、冗談を言って笑い合ったりするようになっていった。そこに晃の居場所はなくて、しかもそれはまるで晃がきっかけを作ったようなものだと思った。

「頑張れば、いつか努力は報われる」

誰がそんな呑気で不愉快なことを言ったんだ。いつかっていつだよ。

晃にとって何事もそんな簡単にはいかなかつた。次のテストでもその次のテストでも晃の点数はふるわなかった。悟はいつも「ギリギリ特進クラスに」と言うが、もうAクラスに落ちることはなかったし、同じように晃は、特進どころかAクラスにすら上がることもなかった。

休み時間、塾の廊下に順位表が貼り出されるのを見にきた健斗と悟とすれ違う。

「調子はどうよ」と健斗。

晃は最大限のカラ元気で自虐的に「俺はBクラスの牢名主だから残るわけよ」と腕組みをしてみせる。

二人は軽く笑って「じゃっ、後でな」と去っていく。健斗も悟も、もう晃の成績などに興味がないのは明らかだった。晃はトイレに入ると鏡に映る自分に呟く。

「くだらねぇ」