【前回の記事を読む】「なぜ逆の数にするの?」「なぜ割り算なのにかけるの?」——分数の割り算のやり方、どう説明する?

第一章 高学年の子たちと~分数から命の授業まで~

3. 逆数とは? 友だちとは?「深く理解したい子どもたち」

③ 小さな手がかりから、まるで犯人を追い詰める刑事のように

「だって、例えば0.4÷0.3=0.4×10÷0.3×10のように、÷の両方に同じ数をかけても答えは変わらないという学習をやったじゃないか。だからこれなら、0.4×10÷0.3×10=4÷3で計算できたでしょう」

「でも、だからなんだって言うの」

「だから、9/12÷8/12=9/12×12÷8/12×12とやって、12を約分すれば9÷8だけになるのじゃないかな」

「答えは、9/8だ。なるほど、逆数をかけたときと同じ答えだ」

「なるほど~。あったまいい」

と子どもたちは、一様に納得して満足していました。そのうちに、ハッとわれに返ったようにある子が、

「でも通分して答えを出すことのやり方ではなくて、なぜ逆数をかけるのかが問題なんでしょ。それはどうなんだろう」

という発言をしました。

「そうだ、そうだった。なんでなんだろうなあ」

「待って。両方に同じ数をかけても答えは同じなんでしょ。だったら通分しないではじめから、3/4÷2/3のどちらにも12をかけたらどうだろう。最小公倍数だから。そうすると、3/4×12÷2/3×12だよね。だから、約分して9÷8になるよ」

「そりゃあ分かるけど、どっちにしろ逆数をかけることにならないよ」

「う~ん、難しいなあ。なんで逆数なんだろう」