【前回の記事を読む】資源も広大な土地もあるのにロシアが成長できないのはなぜ? 経済原理を誤解した国家の悲劇

第2章 カリスマが欠かせない欧米社会

カリスマの原点

ヨーロッパで古代から存在していたとされるカリスマの由来を宗教の解説書を紐解いて、求めてみました。カリスマに関する資料は宗教が絡んでいる事から数が多くなっている割に、私たち日本人に余りピンとくる解説書がありません。

その中でユダヤ教の第二イザヤの話は、欧米人が考えるカリスマを具体的に、且つ分かり易く紹介している処があります。そこで第二イザヤの話をし、そしてイエス・キリストを加えて欧米人が考えるカリスマの原像を浮き彫りにしてみたいと思います。

古代のユダヤ人は、ヨーロッパでは「流浪の民」として扱われていた事から、寄るべく国土を持っていなかったとされていました。その最中のある時、ユダヤ人の行為が支配者のペルシャ国王の怒りを買う羽目になり、ユダヤ人が大虐殺されそうになります。

その時にイザヤが登場し、彼は「ユダヤ人は世界宗教の中心になる存在だ」と訴えてユダヤ人を擁護する一方でユダヤ人の罪を背負って自ら死を選んだとされています。

ユダヤ人は自分たちを擁護し、身代わりになって自死したイザヤに感激し、彼を「神の僕(しもべ)」と評価し、心の糧にしたとされています。

イザヤがユダヤ人の罪を背負っての自死は、ユダヤ人の心に残ったもののヨーロッパではユダヤ人を流浪の民と扱っていた事もあって、イザヤの自死はそれ程ヨーロッパ全土へ波及する事はありませんでした。

年月を経た後、ヨーロッパではイエス・キリストが登場しています。イエス・キリストは、サタンの誘いに乗ったアダムとイブの原罪を背負い、人類の身代わりとなって自死したとされています。

神を創造主、唯一絶対神と捉えるユダヤ教とキリスト教の下、人々のため自死したイザヤとイエス・キリスト。二人のエピソードは「欧米人が考えるカリスマとはどんな人物か?」と人から問われた場合の答えとなる「ヒント」があります。

神が身近に存在する八百万神でなく、欧米人のように創造主と位置づけると、神は人の目には見えず、声も聞こえない暗黙知の存在となります。見えない暗黙知の神を突き求めてみると、神は「仮説」となります。

見えない暗黙知の神を唯一絶対神と位置づけて信奉する欧米社会は、暗黙知の神と人々の間を取り持つカリスマ的人物が必要不可欠な社会となるものです。私はここに欧米社会の特異性と本質があると見立てています。