麻利衣は狼狽して玄関のチャイムを鳴らし、ドアを何度も叩いた。

「ごめんください! ちょっと用があって来ました。この人は犯罪者ですけど、私は無実ですから!」

しかし家の中からは何の返事もなかった。その時、鍵からガチャッという音が聞こえたので麻利衣はごくりと唾を呑み込んだ。

「私の力を甘く見たようだな。この程度の能力で私に対抗しようなど無駄なことだ」

「さっきから何を言ってるんですか。あっ!」

賽子が家の中にずんずん入ってしまったので麻利衣は呆気にとられてしまった。

「ちょっと、無断で入るなんてこれはもう本当に犯罪ですよ」

小声でそう忠告しながらも何故か麻利衣は階段を上っていく賽子の跡を追う足を止められなかった。2階に上がると麻利衣は賽子に先回りして林の部屋のドアを叩いた。

「勝手に上がって来てすみません。連絡が取れなくて千晶が心配しているので代わりに様子を見に来ました」

「無駄だ。奴は死んでいる」

賽子は再びピッキングでドアを開け、部屋の中にずけずけと侵入した。部屋の奥にベッドがあり、右手前にはタンスと鏡台が置いてあった。

向かって左手北側にドアがあり、その手前に折りたたみ式の筋トレ用ベンチが置いてあった。寝室に林の姿は見えなかった。

「そのドアの向こうだな。開けてみろ」

賽子が麻利衣に命令した。

「えっ、何で私が。自分で開けてくださいよ」

「おまえは私の助手だろうが」

「違います! まだあなたの元で働くとは言っていません。私は依頼者の友人ですから、雇われたあなたが開けるべきでしょう。いや、開けるべきかどうかも分かりませんが」

「しょうがない」

賽子がドアを開けて中に入るとそこには衝撃的な情景が待ち構えていた。

次回更新は12月23日(火)、21時の予定です。

 

👉『超能力探偵 河原賽子』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「よかった?」演技なんてしてないのに確かめられて、酸欠状態で無難にうなずいたら、そのあと…

【注目記事】夫の不倫相手の親の家を訪ねることに......「俺も行く」考えの読めない夫もなぜか同行。