【前回の記事を読む】「おつかいに行ったら褒められた」「絵を描いたら褒められた」…幼い頃のポジティブな記憶が、価値観を大きく変えることになる。
Chapter 1 家族という鎖に縛られずに生きる
幸せを遠ざけている、過去の傷に気づく
親は、子どもにとって世界のすべて
私は今、とても幸せです。ここ数年、幸せを感じることがどんどん増えていっているのですが、その一つの大きなきっかけとなったのは、「母が亡くなってから、母との関係を書き換えた」ことにあるのではないかと思っています。
私は、40代で心理学の勉強を本格的に始め、カウンセラーの資格を取ってすぐに、虐待防止の電話相談の仕事を始めました。その中でつくづく思い知ったのが、親の言葉、親の行動が、子どもの価値観や自己肯定感にどれほど大きな影響を与えるかということです。
幼い子どもにとって、親は、家庭は、世界のすべてです。日々の生活の中で親が発する言葉、親が取る行動、親が決めた家庭のルールなどは、そのまま子どもの心(潜在意識)の中に蓄積され、価値観を作り出していきます。
何をしていいのか、何をしてはいけないのか。何が好ましく、何が好ましくないのか。こうしたことを、子どもは親から学んでいきます。
また、子どもは通常、親からの無条件の愛情を受けることで、「自分が、ただここにいるだけで、自分を愛してくれる人がいる」と感じ、自己肯定感を育み、他者や世界を信頼し、他者と安定した関係を結ぶことの素晴らしさを知ります。「自分には幸福になる価値がある」と自然と思えるようになるのです。
逆に、親からの愛情を十分に受けられないと、子どもは常に不安な状態に置かれ、自己肯定感や他者への信頼感を得ることができません。
特に、親から虐待を受けている子どもは、自信をなくし、常に周りの顔色をうかがうようになり、「自分は、ありのままの自分で生きていていいのだ」「自分には幸せになる価値があるのだ」という確信を持つことが難しくなります。
Chapter 1では、私自身の体験を通して、親の言葉が子どもにどのような影響を与えるのか、親から子どもへと継承されやすい「我慢」や「虐待」などのネガティブな連鎖を断ち切るにはどうしたらいいのかを考えていきたいと思います。