図研のエレキCAD開発に見る集団脳

2022年3月に株式会社図研(以下、図研)の技術を統括するCTOの仮屋和浩氏と対談し、図研という日本の会社がなぜ、エレキCADの分野で世界をリードする会社になれたのかという秘密を伺った(QR12)。

QR12:SPECIAL対談 日本の製造業に育まれた 世界標準ソフトウェアの物語~エレキを軸に、つなぎ、全体最適を実現する~

数十年前の開発当初はドローイング、いわばお絵描きソフトであった図研のCADが、ロジック設計を経て、EDA(Engineering Data Automation)へと進化していく。EDAでは、ロジックと物性をデジタルで表現することで、電気電子設計のためのデジタルツインを構築する。現物がなくてもCAD上でプリント基板設計の検証を可能にするという意味では、DXの重要な要素の一つである自動化の領域に入っている。

このエレキCADの進化のプロセスで面白いのが、1980~90年代に隆盛を極めた日本の電機産業の発展を支えるように、図研のCAD技術が進化してきたという事実である。

ユーザーである電機産業が、デジタル・アナログ混在製品からデジタルテレビやデジタルカメラといった本格的なデジタル化に対応していったことに同期して、アナログ回路全盛期にはドローイングソフトであったものが、デジタル回路時代になるにつれて自動化ソリューションに変貌していくわけである。

この後図研は海外の会社を買収し、その技術を吸収していく。同時に、海外ユーザーを獲得してそのニーズにも対応することで、システム設計を支援する水準までその技術を進化させている。

グローバルに技術者とユーザーを巻き込みながら技術を進化させるプロセスは、まさに、ホモサピエンスが集団でコラボレーションをしながら進化していく様を彷彿させる。

このような集団脳の力を引き出し、コミュニケーション能力を高めることでイノベーションを継続するという視点で見たとき、本書のテーマである「製造業DX×3D」はどうなるだろうか。以下の3つの観点から紐解いてみたい。

①デジタル擦り合わせ

②デジタル現場力

③設計DXからダウンストリームDX

 

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