【前回の記事を読む】3D活用の質と量が上がれば、投資対効果の議論がムダに思えるような効果が出せる

第3章 ドイツ発Industrie4.0に学ぶ 製造業DX×3D

貴重な人材に挑戦を

対談で得た知見をまとめれば、「おもてなしという言葉に象徴される日本では、徹底的な顧客満足度の追求という国民性が個別最適を生み、ルール尊重という言葉に象徴されるドイツでは、徹底的な標準化志向という国民性が全体最適を生む」ということになるだろうか。

ワールドカップの後、サッカーの日独比較の記事を読んでいたら、パスやドリブルなどのテクニックでは、すでに日本人が上という話があった。

ただし、残念ながらフィジカルとメンタルのレベルが異なるので、それが試合では活かせないのだという。しかし、2022年のワールドカップでは日本の選手は結果を残した。

製造業でも、情報のパイプラインを築き、その情報を活用することで、さまざまな現場の力をデジタルで引き出し、ドイツに対抗したいものである。

『ドイツではそんなに働かない』には、日本人は同調と協調を取り違えている、優れた人は協調するが同調はしないという指摘もあった。協調とは力を合わせて事にあたること、同調とはある意見を持つ人と同じ行動をとることである。

そして、日本では出る杭は打たれるが、ドイツでは出ない杭は評価されないということである。これはサッカーの試合でも、DXでも同じかもしれない。日本でも貴重な人材をリーダーに据えてチームでDXを推進し、その過程で不満が出てもそこに同調することなく協調して、目標を達成したいものである。

貴重な人材が大きな変革に挑戦してこそ、日本の未来は開かれてくるのではないか。

第4章 3Dデータ活用と集団脳

2022年4月に放映されたNHKスペシャルの『ヒューマンエイジ 人間の時代』という番組の中で、同時代を生きた二つの人類、ネアンデルタール人とホモサピエンスのうち、なぜ、我々ホモサピエンスだけが生き残ったのかという謎に挑んでいた。

ホモサピエンスの勝利を支えた原動力が、規模の大きな集団の知である集団脳と、それを支えるコミュニケーション力だという。

十数人で暮らすネアンデルタール人の持つ石器は10万年たっても進化しなかったのに対し、数百人単位で生活するホモサピエンスの石器は常に改良が行われたという。

しかも、コミュニケーションの力でその改良は継承され、さらなるイノベーションにつながっていった。大変スケールの大きな話だが、これは、我々が直面するDXによる課題解決にもつながってくる話である。