【前回記事を読む】目で見て、動く——無意識のなかで脳が筋肉を操る神経のはたらき
I 動きと意識のダイナミクス
脳の領域と機能
次に固有感覚(深部感覚ともいう)がある。固有感覚(深部感覚)には、位置感覚、運動感覚、重量感覚がある。位置感覚とは、四肢や体の各部位の位置や、関節角度などに関する感覚のことで、今自分はこのような体勢、肢位をとっているという、体の全体または各部の位置関係に対する感覚のことをいう。
運動感覚とは、関節運動(個々の関節の動きはあまり意識されていないことが多いが、体の動きというのは関節の動きが合わさって生じているのである)の方向や速度の変化に対する感覚、つまり自分は今こう動いているという、関節や体の各部の動きに対する感覚のことをいう。
重量感覚とは、力や重さの感覚、努力感覚(重いものを持ち上げようとして力を加えているという感覚)のこととなる。ちなみにこれらの固有感覚(深部感覚)には、顕在的に意識できる感覚(意識型深部感覚)と、顕在的に意識できない感覚(非意識型深部感覚)とがある。
意識されるかどうかということについては、意識される内容には容量があるということも関係しているかもしれない。
私たちは日常的に動きのことばかり考えているわけではない。わが身に起こるいろいろなことを考え、そこから導いた内容が意識されている。
もし、意識としての容量に余裕があれば、深部感覚を意識することができる状態であっても、他のことがたくさん意識にのぼるだろうし、逆に容量に余裕がなければ、深部感覚が意識されないことになるだろう。
また、これらの固有感覚(深部感覚)は、筋、腱、関節に存在する深部受容器によって刺激が感知されて生じるもので、それぞれ、筋紡錘、ゴルジ腱器官、関節受容器という。筋紡錘は骨格筋の内部の錘内筋線維にあり、(筋線維といえば)ふつうは運動に関係した筋肉のことで、これを錘外筋といい、筋紡錘が存在するのは錘内筋といって区別されている。
筋紡錘は、筋が引き伸ばされると反応し、筋肉の伸展の状態、引き伸ばされる速度などを感知する。腱器官は腱に存在し、やはり筋によって引っ張られると伸展の張力を感知する。関節受容器は関節の角度などを感知する。