【前回の記事を読む】「今日は、魚取りをするから」——夏の小川に響く、少年たちの声
第1章
隆は、四手網を投げ込んだ小川の上流から、竹棒をリズミカルに、ガチャガチャ、ガシャガシャと鳴らしながら動かし、獲物を網に追い込んだ。幸三は、隆の動きに合わせ、小踊りするようにはしゃぎながら付いて行き、獲物が獲れる瞬間を、息を潜めて、じっと待っていた。
10分くらい同じ動きを続けた後、網をゆっくりと引き上げた。
四手網の中には、3〜4センチほどの小さな鮒などの小魚が数十匹、アメリカザリガニが2匹、大きなナマズとナマズの子どものピンコロが6匹、さらに四手網の、端隅に追いやられていた青蛙も獲れた。
小魚の中には、虹色に美しく輝く、子どもの人差し指ほどの大きさのタナゴが2匹混じっていた。
この動作を数回繰り返すたびに、獲物をバケツに落とし入れると、バケツの中は黒い塊のようになった魚たちがピチャッ、ピチッ、ピチャッ、ピチッと水音を立て、口から吐く白い泡で底は見えなくなるほどだった。
魚たちは、バケツの中を右往左往に泳ぎ回り、飛び跳ねバケツから外に飛び出そうになる魚もいた。
田舎の夏の夕暮れは早い。山の稜線は沈む夕日で赤く焼け、黄金色に染まりはじめていた。ナマズは、狭いバケツの中を激しく泳ぎ回わっていた。
突然、真っ赤な夕日がバケツに差し込んだ。背中が燻銀のように光を放ち、ピンコロも背の皮膚が金色混じりの赤銅色に輝いた。
「なんて、綺麗だ……」
幸三は金赤銅色に照り輝く妖艶なピンコロの肌色に感激し、大声をあげた。