他にも小さな自営商店や、個人飲食店、雑貨屋が軒を連ね、農協組合、森林組合の店舗や製材場などもあった。

町役場を中心に、高等学校、中学校、町立小学校、病院、消防署、郵便局、銀行などがそろっている。

電車の駅はなく、人々は、バスや、小型三輪自動車のミゼット、ホンダA型やスズキのパワーフリー、自転車などを使って岡山市内へ出かけていた。

中学校は、町に一つだけで、村からは、4キロほど離れているため、子どもの幸三が自転車で通うにはゆうに25分ほどかかった。

ベビーブームの影響で生徒数は急に増え、1年生から3年生までの3学年は各学年8クラスあり、1クラスあたり55人と村の小学校とは比べ物にならない大きさだ。

最初は圧倒されたが、中学校で始まる新しい授業や大勢の友達ができることが、嬉しく、幸三の気分は高揚していた。

入学式の当日、中学校の広く開いた鉄製の正面の門をくぐると、大きく美しく、しかも対照的に建てられた白い校舎が目に飛び込んできた。

校舎の正面には大きな丸い時計が据えられ、まさに学校然としてそそり立っており、その手前には広々としたグラウンドが広がっている。

左右のコンクリート塀沿いには、緑青色の苔むした太い幹の桜が数本植えられており、子どもの腕をいくら広げても余るほどの太さだ。

その桜は両枝を大きく広げ、薄紅色の花を満開に咲かせて、これから始まる新入生の新たな学校生活を祝福しているかのようだった。

ピーヒョロロ、ピーヒュロロ。空は、青く澄み渡り、トンビが幸三を歓迎している。

 

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