カーテン事件

私は六人の大部屋の川沿い側のベッドだった。朝と夜に関節痛、こわばりと高熱の症状が現れるのが私のパターンだった。看護師さんたちにはもちろん承知されていた。

ある日の朝、鎮痛剤と解熱剤の座薬を入れて、痛みと熱が治まるのを待っていた九時頃に副師長さんが突然部屋に入ってきた。そして、副師長さんは「遅くまでカーテンしていて日が入らないねぇ」と言って、私のカーテンだけ開けていったのだ。

母は「規則正しく生活できてたら入院なんかしてへんわ」と怒って詰所に行った。師長さんが母に気付き、話を聞いてくれた。母、師長さん、副師長さんと井上先生がカンファレンスルームで事実関係を話し合った。副師長さんは事実を認めたそうだ。

師長さんは、「長い入院生活いろいろあると思いますが……」と言った。母はカーテンの事より師長さんの“長い”という言葉にショックを受けたと言っていた。なぜなら、母は私の症状が治まればすぐに帰れると思っていたからだ。

二五年以上も診てもらっている河先生が回診で「こんなに長いこと入院してるんはカンナちゃんが初めてちゃうか、ギネスブックに載るなぁ」と言ったことがある。

私も母も他の先生方もなぜかケラケラと笑ってしまった。さすがは河先生! カーテン事件はどこ吹く風やら。

次回更新は12月13日(土)、18時の予定です。

 

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