【前回記事を読む】「社会との接点」として“働く”ということ——自分を矯正し、世界を知ることの大切さ

第1部 学び働く

三 ありがとう

「ありがとう」と言う習慣は日本で定着していない様に思われます。「悪いね」「すみません」「ご苦労様」と言われるよりは「ありがとう」と言われた方が嬉しいと思います。

自己肯定感のない人は肯定的な言葉を発するのが難しい傾向があると思います。北米人に「おめでとう」と言えば「ありがとう」という言葉が必ず返ってきます。日本人に「おめでとう」と言うと相手は絶句したりしてこちらまで寂しい気持ちになります。 

古代人は言葉には霊威が宿っていて言葉通りの事象がもたらされると信じました。それは「言霊(ことだま)」と呼ばれます。

言霊(ことだま)を裏付ける実験をした人がいます。氷を作る過程で、肯定的な言葉を話し続けるときれいな結晶が、否定的な言葉では醜い結晶が出来たというから、言霊は現代でもあると私は信じています。ですから肯定的な言葉を使えば前向きな人になれると思います。

日本人はレストランで支払いする時に「ご馳走さま」等と言いますが英語圏の人はThank youと言います。Thank youという言葉は便利な言葉で英語圏の人はとても頻繁に使います。

I think you are pretty.(あなたはきれいだと思います)

Thank you(ありがとう)

など褒めてくれた人に対してもお礼を言い、良い習慣です。

昔は聞かなかったカスタマーハラスメントという言葉を耳にする様になりました。私も企業に対して苦情を言う事はありますが、褒め言葉や感謝の言葉も伝えるようにしています。相手も人間ですからいつも怒られていたら働く意欲を失ってしまうでしょう。

スーパーで買い物をしていた時の事、兄弟と見られる小さな男の子3人がビニール袋を頭から被って遊んでいました。私は、

「だめ!」

と言って男の子の頭からビニール袋を剥がすと、

「お母さんはどこにいるの?」

と聞きました。男の子についていくと若い女性が買い物をしていました。

「お子さんがビニール袋を被って遊んでいましたよ」

と言って手に持っていたビニール袋を女性に見せました。知らない人から注意されたのが嫌だったのでしょう。女性はムッと押し黙っていました。しかし謙虚な人であれば「ありがとうございます」と言うでしょう、自分の子供を助けてもらったのですから。