看護師さんは丁寧にひとつずつ画びょうを取って消毒をしガーゼを包帯で巻いてくれた。谷池先生には、「なんでテレビ台なんかに登ったんや」、「もっと注意せなあかん」と叱られた。ここで問題なのは誰が画びょうを置いたかだ。
罪悪感からか犯人が名乗り出た。驚くことにそれは私の“弟”だった。私が、「なんで置いたんやぁーっ!」と怒ると、弟は珍しくしおらしくゴメンと謝った。私は一命を取り留めたものの、これは立派な傷害事件だった。
黒服のおじちゃん
記憶は定かではないが、私が警察病院に入院していた六歳か七歳の頃は、山口組の抗争が活発な時期で、撃たれた組員が入院していたそうだ。緊急出入り口近くの待合室には、いつも黒いスーツに身を包みサングラスをかけた男の人たち(おじちゃんたち)が立った状態のままでいた。
その待合室には、私の愛してやまない炭酸ジュースが売られている自動販売機があったのだ。私は背が低かったので、誰かしらのおじちゃんが炭酸ジュースを買うのを助けてくれた。あるおじちゃんに、「早よ、元気になるんやで」と言われ頭を撫でられた。その当時はおじちゃんたちのことを知らなかったが、後に昔のニュースを振り返るテレビ番組を見て、おじちゃんたちの正体を理解できた。
次回更新は12月9日(火)、18時の予定です。
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