「叔父さんお久し振りです。」

「おお嘉子、よう来てくれたねえ。」

「初めまして嘉子の夫の丸山重正と申します。」

「あんたが重正さんかね。」

勢三郎は重正をちらりと見、さらに珠輝を見た瞬間「この子が嘉子の子かや。」

「珠輝叔父ちゃんにご挨拶は?」

「こんばんは。」

だが勢三郎からは言葉は返ってこず、今までにぎわっていた座は急に白けた。勢三郎は珠輝をじっと見据えしばらく沈黙した後、

「兄さん、わしもこれだけ生きたけにもう思い残すこともない。子供たちも大きゅうなったし、わしは家にいても邪魔になるばっかりや。この子がいては嘉子が可哀想やさかい、この子はわしが始末してやろうか。

障害児を殺した所でそんなに重い罪にはならんと聞いたことがあるけに臭い飯もそう長いこと食わんでもよいかも知れんがや。

この子が大きゅうなってかたわらの親戚のことを考えて自分の身の始末を付けるような頭があればよいが、のうのうと生きたならお前たちの子供たちに迷惑がかかるんだぞ。」

嘉子は背筋に寒気を覚えた。

「叔父さん私の心配をしてくれるとはありがたいけどこの子はしっかり育てて、みんなの迷惑にならんように私たちが考えるから叔父さんに迷惑は掛けられんよ。それより折角遠いところから出て来たんだからゆっくりしていってよ。明日は重ちゃんが早番だからもう帰るからね。叔父さんもお達者でね。」

次回更新は12月10日(水)、20時の予定です。

 

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