第I章 大学・大学病院改革の基本路線
1―1 医学教育改革のグランドデザイン――医師養成の導入と基本的骨格
我が国における医学教育・医師養成さらに医療そのものは現在、今まで経験をしたことのないような大きな転換期を迎えている。
現在国民の間で広く要望されている医療安全、患者満足の医療視点は、医学生の医療安全教育、プロフェッショナリズムの習得、有能な医師養成を主眼とした医学基盤教育に反映され、医学教育改革が各大学において徐々に進行しつつある。
このような改革は単に日本のみの現象ではなく、多少の時間的差異があるにせよ世界的な潮流でもある。
こういった問題点を改善し、改革するには、まず大学の使命である地域に根ざした医学教育、医師養成と医学研究さらには次世代型先進医療開発が必要である。
これら「視点」を確認し、それをもとにこれら課題の現状を客観的に検証し、今後の医学教育、医師養成と医療、医学研究と将来的先進医療の開発をおこなう必要がある。このために、医学教育、医師養成の改善と改革に向けて、地域に根ざした「中・長期的グランドデザイン」の構築が必要である。
新臨床研修制度を卒前の学生臨床実習、卒後の初期研修、さらには後期臨床専門医臨床研修に至る一貫性のある医師養成システムの構築の観点からみると、ただ単に医師の大学離れや地域の医師不足といった問題点に留まらず、今後の日本の医療、医学教育と研究、さらに将来的先進医療の開発をいかに構築するかを考慮して中・長期グランドデザインを構築すべきである(図7)。
大学1年次の教育:一般教養の涵養
大学の6年間の卒前教育の最初の1年次は、一般教養の涵養(かんよう)の時期である。その理念は、リテラシー教育、コミュニケーション能力の確立、人間性・人格教育(プロフェッショナリズム)の構築である。
このことは、これからの医学教育を行っていくために不可欠な「学習能力の習得」のために、入学前の受験勉強での暗記学習に対して疑問をもち、自ら調べ、調べた内容の真偽性の確認ができ、知り得たことから論理を作るという「問題解決能力への確立の時期」と位置づけられる。
つまり、1年次教育の主目的は、単に一般教養の獲得ではなくて、人間としての成長を主とするものであり、単なる「常識人としての知識の獲得」ではない。人間としての成長は、「他者を知るということから始まる人間としての成長」を目的としている。
具体的には、入学時から①患者とは? ②地域医療の種類と内容とは? ③地域医療の可能性と限界とは? などの問題を十分認識するカリキュラムを構築することである。
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