【前回の記事を読む】医学研究力低下、医師偏在、地域医療崩壊…。人生100年現役時代、2050年に向けた地域大学改革とは
序文
医学研究競争力低下、医師・診療科偏在と地域医療崩壊
100年現役社会2050年に向けた地域大学改革の必要性
一方、多様性のある医師養成に際し、臨床経験の場の設定を考えた場合、大学と大学病院は卒前・卒後を通して学外に教育拠点、基幹病院を持ち、これら組織と一体化して機能し、医師・診療科偏在と地域医療崩壊を改善し、解消する努力が求められる。
この際、高度急性期、急性期、回復期、慢性期、そして社会保険・福祉を担当する医療・福祉・保健機関、さらに都道府県、市町村の行政などと密接に連携する「医師養成における教育・実習と研修病院・施設群」を構築することが必要であり、このシステム作りこそが大学と大学病院の社会的責任である。
中教審は2040年の在り方答申の中で、大学が特色をアピールするための「養成する人材像を明確にすること」を求めているが、これらは①世界を牽引する人材、②高度の教養と専門性を備えた人材、③高い実務能力を備えた人材の3類型である。
今後わずか15年ほどで多くの問題が山積している大学の生き残りをかけて人材養成を改革するには、もう一度「建学の精神と理念」の原点に立ち返り、それを再確認し、あるべき姿を自ら考え、それに基づいて行わなければならない。
大学が単独で、短期間で改革することは難しいので、自ら「強み・伝統」となる特徴を再確認し、他の関連大学、学部、企業連携との輪(和、コンソーシアム)を作ることが必要不可欠である。
この際、大学が「職業訓練校」になることは避けなければならない。中教審の中間まとめに記されているように「社会が変化しても陳腐化しない、普遍的な能力を身に付けさせる教育」が必要である。
日本の近未来的改善と発展を視野に入れた医師養成と質保証達成のためには少なくとも、医療経験の乏しい卒後臨床研修医と臨床経験の豊富なシニア医師との連携が重要となる。さらに、「地域を支える知の拠点としての医学・医療機関」「知の開拓と創造」「知の交流と活力の創造」「知の貢献による健康で豊かな社会の創生」という4点の基本的将来像への検証が必要である(図6)。
