<こぼれ話 ヒトのからだは美しい>
ルネサンス期の巨匠たちの美しいヌードの絵画は現代の美術館などで数多く見ることができますが、当時は公然と展示できるものではなく、王侯貴族やお金持ちの寝室などに密かに飾られていたものだったようです。
それに描かれているヌードもリアルな生身の女性ではありません。いずれもヴィーナスなどの女神やニンフ(若く美しい女性の姿の妖精)といったギリシャ神話に登場する女性です。「異教的な存在なら裸体でも仕方ない」という言い逃れが利くからでしょうかね。
比較的近年のキリスト教世界でも、有名な画家たちが描くヌードは神話の中の登場人物やなんらかの象徴としての女性ばかりでした。リアルな生身の女性となると世間の目が厳しかったのです。
18世紀の新古典派で美しい女性の裸体画を数多く描いたアングルも、「グランド・オダリスク」は強烈な批判にさらされ、19世紀後半になっても、後期印象派のマネが「草上の昼食」(図3-2)や「オリンピア」(図3-3)で厳しい非難の対象となってしまいました。わが国でも1895年に黒田清輝の「朝妝(ちょうしょう)」に腰布を掛ける騒ぎがありました。
リアルなヌード写真までが氾濫している現代から見るとウソのようです。絵描きさんも美しいヌードを描きたいし、それを鑑賞したい人も多いのにね。
第四話 軍医たちの活躍
―戦場で外科医の地位が上がった―
世界史イコール戦争の歴史?
人類はなぜこんなにも戦争が好きなのでしょうか? 全盛期のローマ帝国や清王朝、あるいはわが国の江戸幕府のような超強力な政権の治世下を除けば、長期間にわたって戦火が絶えていた土地は存在しません。
中世から近世のヨーロッパだけでも、11世紀末から始まった十字軍、14世紀からの英仏百年戦争、封建制度下での領土や王位継承を巡っての戦争、カトリックによるプロテスタント虐殺など、殺し合いの絶え間がありませんでした。
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