「実馬叔父さんそれは止めた方がいいよ。うちの人が言うには鹿児島では従兄弟同士の結婚は血が濃すぎるから絶対させんらしいよ。うちが重ちゃんに言いたかったんやけど言い 出せんかったとよ。」

「鹿児島と福岡は違うぞ。惚れ合ってる仲を何も割く事はないだろう。」

「私の出る幕ではないでしょうが、お二人に取って危ないことは先に教えてあげなさった方がよいと思いますが。従兄弟同士が一緒になると血が濃いから障害のある子が生まれるそうです。もしそうなったら生まれた子供はもちろん、他の兄弟にも迷惑がかかるやも知れませんし、丸山家の恥になるとではないでしょうか。私はそれを心配しとるとです。」

おとなしい繁好の意を決しての発言だった。

「大下さん、これは丸山家の事ですからあんたには口出しは差し控えてもらいましょう」

「実馬はん何言うがや。」

長太郎が実馬をたしなめたが、

「そうですなあ。私は無学で礼儀知らずやもんで失礼しました。のりちゃん俺帰るけん。」

「そんならうちも帰る。」

繁好たちが帰った後に気まずい沈黙が流れた。

一方丸山家を後にした大下夫婦にも重い沈黙が流れていた。やがて法子が立ち止まり、繁好に深く頭を下げ「父ちゃんすまんかったなあ。腹が立ったやろう。」

繁好は「のりちゃん、実馬さんは大層頭がよいと聞いとるが私の言うことを知らん訳はないと思うがなあ。やっぱり私は学がないけん馬鹿にされるとやろうなあ。」

「父ちゃん堪えちゃんないな。よこしゃんたちは叔父さんに利用されようとが分からんとばい。実馬叔父さんは自分と我が子のことしか考えてないとよ。重ちゃんは頭はよかけどそれは知らんとやろうな。けど惚れた弱みで我がよいように解釈するとたいなあ。

二人の事はもうどうにもならんやろうなあ。けど、父ちゃんよう言うてくれたなぁ。こんな大事なことは学の有る無しじゃないとばい、うちは父ちゃんに惚れ直したばい。」

そう言って法子はにっこり笑った。

「のりちゃん、そんなふうに思うてくれたら嬉しいばい。」繁好の顔もほころんだ。

次回更新は12月5日(金)、20時の予定です。

 

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