第三章 人生の転換期
ある日ポストに投函されていた1通の速達の手紙。差出人は権利擁護センターからの手紙でした。
差出人に心当たりもなく開封をしてみるとその文面には義貴叔父さんが他界したことがわかる手紙が同封されていました。さらに読み進めると公証役場で遺言書を作成していたこと、財産分与として姉の娘である私に遺産を遺贈する旨の遺言書となる公正証書のコピーが入っていました。
つまりは法定相続人ではない姪の私に遺産を渡したいという内容。叔父との思い出をなぞることで、私は何もできなかった。ただいつもその優しさに甘えてばかりだったと、多くの後悔の気持ちが溢れてきました。
母にこの通知を受け取ったことを伝え、久しぶりに会うことにしました。 母は随分と老け込んでいました。父が他界してからは母子家庭で様々な困難も一緒に乗り越えてきた私たち親子。
思い通りに進まないと怒りの感情を表に出すことの多い母。自己保身に走ることも多いけれど、愛情で私を守り育ててくれた母と過ごせる時間は幸せな時間でした。
駅前のファミリーレストランへ入店し、昔から変わらず外食する時はいつも私と同じメニューを注文する母とその日も同じメニューを向き合いながら一緒に食べました。それが最後の晩餐となるとは全く想像していませんでした。
その頃、私はカフェ経営に挑戦しようとしていた時期でした。資金もない私が目にしたのは「レンタルカフェ」でした。
キッチンも調理器具もすべてがそろった状態で1時間単位の貸し出しをしてくれる場所が都内でも数カ所あり、もちろん時間貸しの営業店舗だけではなく、個人のパーティー会場として使うことも可能なレンタルスペースが都内を中心に増えてきている。そんな時期でした。