【前回の記事を読む】コンクリートはなぜひび割れるのか? 弱点を補う工夫と、橋や鉄道の構造物で使われる補強方法を解説!
序章 プレストレストコンクリート
1.プレストレストコンクリートとは
1 . 3.プレストレスの方式
(2)ポストテンション方式
ポストテンション方式は,部材内部にホース状の材料(シース)を配置して空洞を設けておき,型枠内部に打設したコンクリートが硬化した後,シース内部に挿入したPC鋼材を油圧ジャッキで緊張して定着具で固定し,プレストレスを導入する方法である.コンクリート打設中にシースがつぶれないように,あらかじめPC鋼材を挿入しておくこともある.
この方式は,工事現場で製作される橋桁の軸方向にプレストレスを導入する場合(縦締め),橋桁架設後の複数となる主桁どうしを連結するためにプレストレスを導入する場合(横締め)などに多く利用されてきた.近年,PC鋼材配置のための本数や形状に制約がないことから,PC鋼材の定着工法,橋梁の架設工法などの技術進展に伴い,種別を問わず大規模な構造物への適用が可能となった.
本方式は,橋梁などに見られるような架設地点でプレストレスを導入する場合に適しており,緊張したPC鋼材をコンクリート部材に固定する定着工法が多く開発されている.緊張作業が完了すると,シース内面とPC鋼材表面の間に隙間が生じているため,シース内部にセメント系充填材(PCグラウト)を注入する.
PCグラウトは,PC鋼材の防錆と硬化したコンクリートとの付着力を確保するために必要となる.近年,PCグラウトを省略することを目的とし,シース付きPC鋼材で内部充填材が硬化するプレグラウトPC鋼材や,主桁外部に配置するため,ポリエチレン,エポキシ樹脂などで被覆されたアンボンドPC 鋼材も多用されるようになった.
ポストテンション方式の特徴を以下に列記する.
① PC 鋼材の定着工法を選択する必要がある.
② PC鋼材の種類,定着工法により,使用する緊張機器が異なる.
③ PC鋼材の本数や配置を任意に設定できるため,大規模構造物への適用性が高い.
④ 橋梁の架設地点における施工など,段階的な緊張作業が可能となるため,施工ステップに応じたプレストレスの導入に適している.
図-1.3.2にポストテンション方式の概要を示す.
1 . 4 . 構造物への適用例
プレストレストコンクリートの構造物の適用としては,橋梁分野が最も普及している.以下にその適用例を示す.
(1)プレキャスト桁を用いた橋梁
工場や現場の架設地点近くのヤードで製作される主桁を用いる橋梁である.プレテンション方式やポストテンション方式で製作した主桁を直接架設する方法,運搬可能な大きさに分割した主桁セグメントを架設地点でポストテンション方式により一体化して架設する方法などがある.写真-1.4.1,写真-1.4.2にプレキャストPC桁橋の適用例を示す.

