【前回の記事を読む】戦後を生き抜いて――農作業に汗し、酒屋に奉公し、工事現場で鍛えられた青春の日々
第一章 機械と向き合う人生の始まり
丁稚奉公と工事現場
これ以上はもう登れないと思ったので下山するとみんなに伝えた。それでも何としても頂上を目指そうと、私の体を後ろから支え前から引っ張ってくれた。また持ってきた弁当を食べると気分がよくなったので、みんなと一緒に頂上まで辿り着くことができた。
山頂から見た景色は花崗岩のそびえ立つオベリスクや山並みに続く緑のハイマツが本当に素晴らしかった。ちょうどお昼だったので、みんなは弁当を広げた。途中で食べてしまった私にも少しずつ分けてくれたのを覚えている。
私達が登った山は、本来なら登山用の装備をして一泊二日で行くコースだったらしい。下山して家に帰ったのは夜の八時頃で、あたりは真っ暗だった。
家の前では母がおろおろして、私の帰りをまだかまだかと待っていた。なんて無茶なことをしたんだと叱られたが、あの登山は今も忘れられない思い出だ。
そんなある日、仕事から帰って庭を見ていると、父に後ろから声をかけられた。父はいつまでも今の仕事でいいと思うなとひと言言った。
これで満足してはいけないということなんだろうと私は思った。