当然の再会

10月21日。授業を受けられること自体が嬉しい。誤認逮捕を境に様々なことが変わった。学校で過ごす時間、友達と話す時間、すべてが貴重である。

今日の夕方には香原弁護士事務所に向かう。不思議とうまくいきそうな気がする。あらゆることを大事にできる、そんな自信があるからだ。

「先生、さっきの問題ですが、もう一度説明してもらえませんか」

自ら挙手し質問した。

「おお。皆も今岡のように分からないときは聞くように」

今まで寝ながら授業を聞いていた時間は何だったのか。答えがあること自体に素晴らしさを感じる。

昼休み、屋上に上がる。晴れた日のいつもの過ごし方だ。すでに亮がいる。

「やーっと来たか。はや何日経ったことか」

亮は俺を見てニヤッと笑う。俺も横になる。

「今日は学校が終わったら有希の弁護士に会うんだ」

「おー、そっかそっか」

亮はきっといろいろ心配してくれている。こういうときこそ元気な姿を見せなければいけない。

「でもさ、なんか分からないけど俺、頑張れる気がするよ」

適当に言ったつもりも強がりで言ったつもりもない。亮が空を指差す。

「お前がいない間も、あの雲はずっとあそこにいたんだ」

亮からの「そんなに時は経っていない、焦るなよ」というメッセージだ。

「亮、お前やっぱさすがだな。ありがと」

もうこうなると言葉は要らない。存在が絶え間ないコミュニケーションとなり、互いの支えを無言で確認しあえる。

充実感が瞬く間に午後の授業を終わらせた。

 

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