この人の影響で、女力士が居ないにも拘わらず、桜田部屋が女相撲協会内から脱会させられずに済んだと言っても過言ではないのだ。

初対面での望月は、長期入院から退院したばかりということもあり、まだ、体調が悪い様子で、話す言葉にも力が無かったが、久しぶりに桜田部屋の者が訪ねて来てくれたことを、とても歓迎し、桜田部屋から、新たな女力士が本場所に関取として上がる可能性があることを伝えると、大変、喜んでくれた。

「そうなんや。ヨシちゃん(巴、坂額)の後輩が出来たんやな。四股名(しこな)は『右近』やな。『二代目右近』やな」と、雷子に話しかけた。

三人は「いえ、いえ、いえ」と言って、小さな方の咲が女力士であることを伝えた。 望月は驚いたが、「右近(女将)が許可したんやから、相撲の方は強いんやな」と言った。

道長が「就きましては部屋の方針で、後援会も廃止したいと考えています。望月様には長年に亘って支援して頂きましたが、何卒、理解して頂けますよう、お願い致します」と言うと望月は「相撲のこと判らんくせに、スポンサー面して色々と下らんこと言うのがおるからなあ。後援会無くすなら、それで構わんよ」と答えた。

道長は「有難う御座います。勝手言います。それと、こちらに当方からの借金があるのであれば必ず返しますので、金額を教えて頂けますか」と言うと、瞬時に望月の目が吊り上がった。

「道長君。部屋に借金とかあるんか」

「お恥ずかしい話ですが、結構あります」

望月は電話を取り「悪いね。ちょっと電話させてもらうよ」と言って、相手先に掛けた。

 

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