鰹節と玉
たかちゃんのお婆さんのお隣の猫は、メスで、名前を玉という、とても賢い猫だった。お婆さんの家に来るので、たかちゃんにも良く懐いていたが、しかし、その猫は性悪で、たかちゃんがいない時に、お婆さんの家に入り込み、何と台処の戸棚の戸を開けて中に有る鰹節を盗んでいた。
その事を、たかちゃんがお婆さんに言うと、
「隣のバカ猫が、戸棚を開けて、鰹節を盗むほど、賢い筈が無いだろう!」
「バカ猫の所為なんかにして、悪い子だねえ!」
と、無くなった鰹節の事で、たかちゃんが代わりに叱られた。
「私、鰹節を盗み食いなんかしないよ」
と、言っても、お婆さんに分かって貰えなかった。
ある日、お隣の玉が、お婆さんの家の窓の隙間から入り込み、台処の戸棚を手で器用に開けて、その中に有る鰹節を咥えて持ち去ってる所を、偶然、たかちゃんに見られた。
高級な鰹節が、何度も無くなるのは、お隣の猫の玉が、常習的に盗んでいて、玉が犯人だったからだ。
嬉しそうに意気揚々と鰹節を咥えて、小走りで運ぶ玉の姿を見掛けた。
それを毎回、鰹節を盗む一部始終を、たかちゃんに見られ、最後にはお尻を叩かれたら、それ以後は、玉はたかちゃんを嫌い、たかちゃんに対して冷たい態度を取るようになった。
しかし、盗んだ鰹節は玉が食べていた訳では無かったのだ。
その猫の飼い主は、自分の猫が盗んで咥えて持ってきた鰹節を、何と家族で食べていたのだから、それには、たかちゃんも驚いて呆れて仕舞った。
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