鰹節と玉

たかちゃんのお婆さんのお隣の猫は、メスで、名前を玉という、とても賢い猫だった。お婆さんの家に来るので、たかちゃんにも良く懐いていたが、しかし、その猫は性悪で、たかちゃんがいない時に、お婆さんの家に入り込み、何と台処の戸棚の戸を開けて中に有る鰹節を盗んでいた。

その事を、たかちゃんがお婆さんに言うと、

「隣のバカ猫が、戸棚を開けて、鰹節を盗むほど、賢い筈が無いだろう!」

「バカ猫の所為なんかにして、悪い子だねえ!」

と、無くなった鰹節の事で、たかちゃんが代わりに叱られた。

「私、鰹節を盗み食いなんかしないよ」

と、言っても、お婆さんに分かって貰えなかった。

ある日、お隣の玉が、お婆さんの家の窓の隙間から入り込み、台処の戸棚を手で器用に開けて、その中に有る鰹節を咥えて持ち去ってる所を、偶然、たかちゃんに見られた。

高級な鰹節が、何度も無くなるのは、お隣の猫の玉が、常習的に盗んでいて、玉が犯人だったからだ。

嬉しそうに意気揚々と鰹節を咥えて、小走りで運ぶ玉の姿を見掛けた。

それを毎回、鰹節を盗む一部始終を、たかちゃんに見られ、最後にはお尻を叩かれたら、それ以後は、玉はたかちゃんを嫌い、たかちゃんに対して冷たい態度を取るようになった。

しかし、盗んだ鰹節は玉が食べていた訳では無かったのだ。

その猫の飼い主は、自分の猫が盗んで咥えて持ってきた鰹節を、何と家族で食べていたのだから、それには、たかちゃんも驚いて呆れて仕舞った。

 

👉『たかちゃん幻想絵巻』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「お父さん、大丈夫だと思うけど、ある程度の覚悟はしておきなさい」――震災後2週間たっても親の迎えがない息子に、先生は現実を…

【注目記事】(お母さん!助けて!お母さん…)―小学5年生の私と、兄妹のように仲良しだったはずの男の子。部屋で遊んでいたら突然、体を…