見せたい私、それが私
先輩は最近副業に精を出しているという。それは先輩の元アナウンサーという肩書を存分に活かしたもので、披露宴の司会をしているそうだ。
なんでもそれはとても愉快で、先輩にとって理解しがたい価値観だからこそ一歩引いて楽しめるエンターテインメントだそうだ。
かくいう私は前の夫との間で、それはそれは豪勢な披露宴をした経緯がある。当時私は二十代半ばで、今と変わらず承認欲求が強かった。
当時記者として警察回りをしていた私は、披露宴に県内東西南北から署長・副署長らを呼んで驚かせた。
会場を占める人間の七割くらいは新婦側で、男はそれでも何も感じていないように見えた。男の家族も何も気にしていないようだった。今思えばやっぱり彼らはアンテナがどこか折れていたのだろう。
(極端に感度の低い人たちだった)
「披露宴って、もう私はうんざりですね。あんな自己満足でしかない茶番を何度も何度も見せられて、もう最近はそんなに呼ばれることもないですけど、笑えさえしなくなりましたね。
無ですよ、無。先輩は一体全体どんな心境で司会なんてしているわけですか。そもそもお金もそんなに良くないんですよね」
「うん、一回三万五千円。でもさ、それで本来休みだった一日が潰れて、暇つぶしできるわけ。休みだったとしたらきっとパチンコ屋で五万とか平気で使っちゃう一日に、それを使わないどころか三万五千円もらえるんだよ?」
「いやいやいや、意味分からないです。で、そんなマインドでやっているんですか? 小馬鹿にしながらマイク持っている感じですか?」