第2章 平成のゴッドハンド 人生100年時代を生き抜くための健康と医療を語る
治らない三種の神器
中村:治療内容よりも絶対数ですか?
溝口:病院も一般企業と同じように収支があって損益分岐点があって、その中で運営していかなければならない。最新設備の導入費、医療機器用具、材料費(消耗品など)、人件費、薬の仕入れ、病院建設にかかった費用、テナント料、教育費、研究費、雑費、そして固定資産税、光熱費など、イニシャルコストやランニングコストを考えた場合、そこそこの患者数ではやっていけないんですね。
大学病院クラスになるとその額は桁外れです。ですから、運営費がかかるために患者の絶対数を増やすということに異を唱えているわけじゃありません。
中村:じゃあ、何に問題があるんでしょうか?
溝口:そのためには、もう少し運営費のことを話さなければなりません。医療機器や医療設備は基本的にローンを組みます。考えられないくらい高価なものもあります。現在進行形で運営と治療を両天秤にかけてバランスを取っていかなければならず、同時にかかる経費(固定費、変動費)のコストカットもやっていかなければなりません。だから、運営と治療内容の間に捻じれ現象が起きてくるんです。
運営を重視すると治療内容が乏しくなり、治療を重視すると運営に大きなダメージがのしかかってくる。病院側にとって運営と利益は同義語であり、じゃあ運営と治療内容のどちらを取るかとなった場合、ほとんどが前者です。
ですから、高価な設備や医療機器の減価償却のために意味のない検査などを実施しなければならないという苦しい台所事情があります。レントゲン設備を導入しました、MRIやCTといった設備を導入しましたとなると、必然的に減価償却していかなければなりません。だから、少しでも早く減価償却するために無駄な検査など、そんなに必要でもない検査をしないといけないんです。