中村:治療内容の前に病院側の優先順位があるんですね。
溝口:いいんですよ、優先順位があろうと。必要である医療設備や医療機器の返済も運営していく上で避けては通れないものですからね。但し、私が問題にしているのは、返済のために無駄に患者の体を利用するなということです。
返済するために患者に対する治療のクオリティーを落とすなということです。運営面の内情は患者には関係ないことですから。
それが嫌なら最初から治療という看板を掲げるべきではないですよね。病院という名の本質はどこにあるのか? という話です。
中村:減価償却の一環、利益確保のために患者の体を利用するなということですね。ごもっともなお話です。
溝口:いまだに肺ガンの検査と称してレントゲンをメインにしている健康診断がありますが、肺ガンの検査としては適切ではありません。現に杉並区のある病院がレントゲンで見落とし、肺ガンで亡くなられた患者がいましたよね。ニュースでも流されたので皆さんもご存知かと思います。
既にアメリカでは堂々と「役に立ちません」と立証しています。患者の被曝や検査費用、社会保障問題などを考えると一刻も早く止めて、他の方法を採用すべきです。
ちなみにレントゲンなどの医療被曝に関して言うと、一人当たり年間3.9mSvです。これは世界でも最も高い数値です。いかに無駄なレントゲン検査を実施し、患者から検査費を搾取しているか……。
中村:大学病院ともなると運営面に関しては大変でしょうね。
溝口:いつつぶれてもおかしくない状況ですよ。ただ第1号にはなりたくないので必死に維持しているというのが現状です。大学病院も総合病院も慢性的な赤字に陥っていますからね。
大学病院の勤務医は労働量とリスクを考えるとなかなかモチベーションを上げづらいと思います。給料もそれに見合ってないですしね。
あるアンケートでもわかっている実態ですが「今以上の条件で働ける病院がないか?」「もっと給料をもらえる病院はないか?」と考えている現役勤務医が非常に多いというのですから、サラリーマン医師になってしまうはずです。技術研鑽どころではないというのが本音の一部にあると思いますよ。先ほども申し上げた通り、大学病院にかかる費用は膨大で桁違いなため、そして医師不足ということもあり、運営がいつどうなってもおかしくない状況が続いています。