第2章 平成のゴッドハンド 人生100年時代を生き抜くための健康と医療を語る
治らない三種の神器
中村:溝口先生、今日はよろしくお願いします。まずお聞きしたいのは、最近のお医者さんはなぜパソコンばかり見て、患者の痛い所に触れもせず、簡単に「お薬を出しますから」と言って終わるんですか? いきなり素朴な質問で申し訳ありません。
溝口:昔のカルテがパソコンに変わって、患者の既往歴、症状、薬の処方、入力されたレントゲンやMRIなどの画像を見て診断する時などにパソコンが使われています。きちんと記録を残すという部分においては、昔のペーパーカルテよりも遥かに記録容量も多いし、正確でスピードアップにもつながっているので、それ自体には問題ありません。問題なのは、それだけで終わるから良くないんです。
中村:と言いますと……?
溝口:整形外科の例でお話ししましょう。主訴が右肩痛の患者がいたとして、最初に整形外科医がやることはレントゲン撮影です。腱、靭帯、筋膜などの軟部組織に原因があると考えられる場合でも、まずはレントゲンで骨に異常があるかないかを調べます。そこからが医者の患者に対する姿勢が問われます。
骨に異常がなかった場合でも、患者が痛がっている以上は軟部組織や関節などに異常がないか痛みの原因を追及し、レントゲン以外の画像診断(MRIやBモードなど)で検査するのが当然です。原因がわからなければ正しい治療法が構築できないからです。
しかし、ほとんどの整形外科医はレントゲンで終わってしまう。そして、決まり文句のように「様子を見ましょう。とりあえず、痛み止めの薬と湿布を出しときますね」と患者に告げます。このパターンが実に多い。これでは無責任診療としか言いようがありません。
その痛みの原因が骨ではなく軟部組織や関節である場合は、レントゲン以外の画像でチェックしなければわかりません。骨はレントゲンでOKでも、軟部組織はMRIやBモードなど、腫瘍系はCTなどを用いて検査すべきです。
膝や肩などの痛みの原因が軟部組織という場合もあるため、なおさらのことレントゲン以外の画像診断が必要です。触診して左右差も確認しないのですから透視でもできるのかな?! って感じです。