中村:では、なぜそうしないのですか?
溝口:理由ははっきりしています。「とりあえずビール」と同じです。とりあえずレントゲンも撮ったし、とりあえず骨にも異常はないし、とりあえず説明したし、とりあえず湿布と痛み止めの薬も処方したし、とりあえず「様子を見ましょう」で締めたし。
ほんと見事な流れで「ハイ終わり」です。「とりあえず様子を見ましょう」という発言には要注意ですよ。
実は、「様子を見ましょう」と言う場合は大体2つのパターンがあります。良い「様子を見ましょう」と悪い「様子を見ましょう」です。
良い方は、徹底的に精密検査をしその検査に即した治療を施した後や手術後などの経過観察としての「様子を見ましょう」です。この場合は医者のスキルを十分に反映させ、治療後、術後に個体差のある患者の状態を観察するための経過観察期間が必要だからです。この場合は「様子を見ましょう」という言葉以外はないでしょうね。
一方の悪い「様子を見ましょう」はこの逆です。レントゲンだけで大した検査もせず、経験や推測で診断し、大した治療もせず、治らない三種の神器(レントゲン、痛み止め(注射か薬)、湿布)で済ませた時に使われます。
さらに誤解を恐れずに言うと医者自身が治す気がないか、治す術を持っていないかのいずれかで、逃げ口上として使う便利な言葉として使う場合に使います。これを見極めるのは簡単ですよね。いくら患者でも、どちらに該当する「様子を見ましょう」かぐらいはわかるはずです。
もし、悪い意味での「様子を見ましょう」に該当していたならば、二つの方法を取ってください。一つ目はすぐに別の病院に移ること。二つ目はセカンドオピニオンやサードオピニオンを作り、現状の治療内容や医者が発した診断名やワードを覚えている分だけでもいいですから、全部お話しして相談することです。
世の中には誤診する医者、まともに治療しない医者が山ほどいるということを認識してください。そして、一流の医者は一握りしかいないということも。
そして、特にMRIなどの高価な検査機器を置いていない医院などはレントゲンだけで済ませ、痛み止めの薬と湿布を処方するというお決まりのパターン。患者はこのレントゲン、痛み止め(注射か薬)、湿布の“治らない三種の神器”で放置され、悪化するのを待つのみ。
たまにこれに気を利かした低周波電気治療などが加わるものの、10分程度の電気治療。根本治療には程遠いものです。実際、そういう治療を何年も続けられ、左膝が大きくくの字に曲がって激痛を伴うという患者を何人も見てきました。
もうこうなってしまうと手術以外の方法はないでしょう。「それでも、まだこんな医者に診てもらう気ですか?」と患者にも問いたいですね。