【前回の記事を読む】有名な占い師に「あなたと彼は前世から結ばれる運命だった」と告げられた社長令嬢、彼への執着が止まらない――!
不可解な恋 ~彼氏がお見合いをしました~
早い内に相談して対応を考えないと……そう思いながらも、今感じている幸せに水を差したくないと思えたので、改めて場を設けようと思い直して、この夜に話を出す事を控えた。
しかし、その翌日……それが後悔に変わるのだった。
店頭にまた悠希さんの父親である田中社長が現れたのだ。
「今日は八百万を用意させてもらった。これで園田俊雄君と縁を切ってくれんかね」
「それはできません」
「なら、いくら出せば――」
「お金の問題ではありません。一億積まれても、私達の気持ちは離れませんし、私は俊雄さんを手離す気はありません」
キッパリそう言うものの、相手は一歩も引かない。
「どういう条件なら良いんだね?」
「ですから、そういう問題ではなくて……好き合っている者同士を切り離す事はできないんです」
ああ、もう一体何をどう言って説得したら諦めてくれるんだろう……。
「だが、君達は結婚の約束はしていないだろう?」
「それは、そうですけど……。それが何だって言うんです?」
「こちらは明日にでも挙式できる準備がある」
呆気に取られてしまう。それが何だと言うの?と思い、大きな溜め息が出てた。
「俊雄君は前向きに考えてくれると言ってくれているんだが」
「え? 俊雄さんが!?」
つい大きな声が出てしまった。
「知らんのかね? 前向きに考えさせてもらいます、と確かに言っていたよ」
そんな事、昨日は言っていなかったのに……どういう事!?
「つまり、後は君次第なんだよ。君が諦めてくれたら、悠希は俊雄君と結婚ができて幸せになれる。だから、この八百万を受け取ってくれないかね?」
ズイッと太い封筒を差し出される。
何で俊雄さんがそう言ったのか分からないけど、昨日の時点ではその事を話されていない。やっぱり今後の対策を立てておくべきだったと思っても、後の祭りだ。
「私は彼が、困っているとしか聞いておりません。それでは仕事がありますので」
お辞儀をしてその場を離れようとすると、「ならば一千万ならどうだ?」と言ってきた。
「お金の問題じゃないです。私達は愛し合っているんですから」
「悠希との関係だって、俊雄君は良い関係だと言っていたぞ? だから二人はお見合いの夜に同じ部屋で過ごしたんだよ」
一瞬意味が分からなかった。
「同じ部屋でって……」
「それ以上言わんでも分かるだろう? 男女が一晩同じ部屋で過ごす事の意味は」
そんな話聞いてない……。一緒に過ごした? どういう事!?
父親は男女の関係の事を言おうとしているのは分かる。だけど、俊雄さんはそんな事はしない……はず。私の知っている俊雄さんなら。
「とにかく、仕事の妨げになりますから、お帰り下さい」
「……頑固な娘だな。分かった。また出直す事にしよう」
「ちょっとちょっと、亜紀、どうしちゃったの!? 彼氏の事を話していたように聞こえたけど……」
真由が後ろからそっと声を掛けてきた。噂好きな真由の事だから、長澤さんとかに話しそうだったので、今の話は黙っててね、と釘を刺す。