「トラブってるのは知っていたけど、もしかして三角関係?」

「違うよ。相手が一方的に彼に熱を上げてるの」

「うあ……。で? 優しい彼氏はちゃんと対応してるの?」

「それは……」

「話し合っていないんだ。どうして?」

「はいはい、仕事しなきゃだよ」

「むぅ……」

何とか話を終わらせて仕事に戻った。真由にまで掻き回されては堪らない、というのが本音だ。面倒はご免だから。

午後になると、南君が買い物にやって来た。

「こんにちは、亜紀ちゃん」

「いらっしゃいませ」

「……俺の付けたキスマーク、残ってるね」

耳元で囁かれて、かあっと顔が熱くなる。
「あのね、これのせいで誤魔化すのが面倒だったんだから」

「彼氏?」

「そう!」

「揉めた?」

「誤魔化したって言ったでしょ?」

「俺としては喧嘩に発展して、別れるって筋書きだったんだけどな」

堂々と言われて、逆に清々しかった。でも、わざとやった事は事実なので、そこだけは許す事ができない。

「また、デートしようよ」

「しません。で? お探し物はなんですか?」

「亜紀ちゃんを探しにやって来た」

歯が浮くような台詞を言われても、ときめきもしない。今は悠希さんと俊雄さんの関係の事で頭がいっぱいだ。

田中社長の話が本当なら、俊雄さんに追求をして、真実かどうかを確かめる必要がある。悩むのはそれからでも遅くはない。

「亜紀ちゃん、機嫌直して! もう、あんな事はしないから」

真横で叫んでいる南君の言葉さえ耳に入らない程に、俊雄さんの事が気になっていた。良い意味でないのが残念だけど。

それにしても、どうしてこうも恋愛に苦労しないといけないんだろうと思えてしまう。それも当事者ではなく、第三者によって、だ。

今夜にでも俊雄さんと話し合いをしたい、そう思って、休憩時間にLINEで連絡をした。俊雄さんからの返事は直ぐにきて、OKとの事だった。

これで悠希さんへの対策が取れる。いやその前に彼女との関係を確かめないといけない。大事な事だ。

仕事が終わった後、家で俊雄さんを待つ間も複雑な気持ちだった。

次回更新は11月23日(日)、19時の予定です。

 

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