そして翌朝のことだった。まだ私が寝ていた時分にリビングにおりてきて、いつものように、私と目を合わせないで独り言のように怒鳴る……。
「もう誕生日のお祝いはしないから! 俺はのけ者だから! 誰の金だと思っているんや!」
娘たちにも聞こえてしまっただろうか……。それにしても、何を今さら、この人は言っているんだろう? これまでだって、いないことのほうが多いくらいだったじゃない……。頭にきた私は、その日、娘たちに社会人になるまで毎年渡す予定だった、誕生日のお祝い金の残りを、全額前払いで、それぞれの銀行口座に入金した。
十一月に入り、私は内心あせりを感じていた。
(真奈美の誕生日に間に合わせるなら、遅くても、十二月の第一週目には家を出ないと……)
まだ、夫の十二月のスケジュールは定まっているはずもないが、のんびりしてはいられない。未確定なものでも見ないよりはいいだろうと、私は新たに撮影した十二月のスケジュールを確認して、その日を絞り込んだ。仕事のほうは、パート先の上司に相談して、十一月末で退職させてもらうことにした。
弁護士さんにも伝えると、「警察にも話しておいてください」とのことだったので、地元の警察署に行って話すと、「移動先に無事着いたら、現地の警察にも報告してください」と言われた。
引っ越し屋さんも頼まなければならないので、電話してみると、最初は、「年末で混んでいて、すでにいっぱいです」と言われたが、事情を話すと、どうにか調整してくれた。ほかにも、町内会の役員をしていたので、その引継ぎと、車の定期点検の段取り、新聞代の契約期間分の支払い等々……限られた時間の中でやらなければならないことが山ほどあった。
がんばろう
きょうもほんとに
がんばろう
きっとたのしく
いきられる……
はず
こどもがいるから
がんばれる
それいじょうでも
いかでもない
いまのじぶんは……
ただ……ただ……
ひっし
「大人の恋愛ピックアップ記事」の次回更新は10月25日(土)、12時の予定です。
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