【前回の記事を読む】エミールに込められた「子どもが教育の主人公」という考え方。しかし、当時の貴族からは理解されず、あざ笑われてしまい…

小さな物語

偉大なる教育者たちとコウ先生

【小さな寓話】コタローと八匹の猫たち

コタローは元気な柴犬だ。コウ先生の子どものユウの家に住んでいる。コウ先生もユウの家に住んでいる。

コタローのほかにもワンちゃんが住んでいる。キーとモモだ。モモはコタローが大好きで、いつも寄り添っている。コタローの耳まで、ペロペロとなめてくれるほどだ。だから、コタローの耳は、なぜか傾いてしまった。耳の中がぬれて、小さな菌が住みやすくなったのだろう。

心配したコウ先生とコウ先生の妻アーちゃんが、コタローをワンちゃんの病院へ連れて行った。

コタローは、病院に近づくにつれて、様子が変になった。病院から遠ざかろうと必死にもがくのだ。

なぜかというと、コタローは、注射がとっても苦手なワンちゃんなんだ。診察室に入るだけで、心臓がバクバクしている。今にも心臓が飛び出してきそうである。気は優しくて穏やかなワンちゃんだが、とっても臆病者なんだ。

仕方なくコウ先生は、コタローを抱っこして、診察室の中へ入ることにした。

抱っこされているのにコタローは、しばらくの間、心臓バクバクだった。診察室には、笑顔で優しそうな病院の先生と看護師さんがいた。コタローは二人に囲まれて、診察を受けた。

コウ先生は、つぶやいた。

「コタローは、いいなー。若くて笑顔の素敵な女性に囲まれて」

そばにいたアーちゃんは、聞こえないふりをした。コウ先生の人柄は、お見通しだ。

しばらくして、コタローは動物病院の先生から、優しく注意された。

「あまり、耳の中をなめられないようにね」

コタローは、耳掃除をしてもらった後に、耳の中に薬までぬってもらった。とっても気持ちよさそうだった。心臓バクバクの泣きそうな表情のコタローではなく、ウットリした表情に変わっていた。

コタローは、外遊びが大好きで旅行や散歩などが、大・大・大好きなんだ。家にいるときには、いつも窓側にすわり、戸外を恋しそうにながめている。きっと大空のもとで、遊びたいのだ。

これからの話は、コタローが、コウ先生の家族アーちゃんたちと共に長崎へ旅行をしたときの話だ。長崎には、いなさ山という山がある。

コウ先生の子どもの頃には、いなさ山でデートした恋人は別れてしまうなんていう迷信もあった。

これは、迷信であることは、証明済みだ。だって、コウ先生は、ここでアーちゃんと何度もデートしたけれども、別れることはなかったからだ。アーちゃんと結婚をしてどうにかこうにか幸福な家庭を築くこともできたからね。二人は双方の親の反対を押し切ってまで結婚したんだ。

二人とも若かったね。若さは、万難を乗り越える力だね。涙を流すこともあったけれども、ゴールインできたよ。

しばらくして、子どもはリョウとユウの男の子が二人できた。リョウとユウの二人の子どもは今では大きくなって、たくましく元気に育った。

さて、コタローの話にうつろう。「コタローと八匹の猫たち」の話である。まるで絵本のような小さなお話だから、少し情景を思い浮かべながら読み進めてほしいな。ゴールドな犬やピンク猫も出てくるからね。