考えていたら腹が立ってきた。そうだ、思いついた。クラスのみんなには西海に告白されたけど振ってやったと言ってやろう。細かい内容はともかく、実際その通りになるのだし。私みたいなやつに振られたなんて不名誉だろうが、同情の余地はない。そもそもこいつの身から出た錆でしかないのだから。

「北田、俺は成績が良い」

数十秒ほど考え込んでから西海が口を開いた。

改めて何を言い出すのかと思ったら、そんなことは周知の事実である。

「知ってるよ。なんでいきなり自慢を始めたの」

「一彦いわく、どうやら俺は自分で理解するだけじゃなく、人に教えるのもうまいらしい」

急に東堂の名前が出てきたので、私は一瞬思考がフリーズした。

あまりみんなが重要視していないことなのだが、東堂は特別に成績が良いわけではない。ルックスと運動神経はずば抜けて良いが、成績は中間より少し上くらいだとどこかで聞いた。

なんで今その話をするのか。西海の発言の意図を読み取ろうと思考が再び動き出す。

そして嫌な予想が脳裏をよぎる。

例えばの話なのだが。東堂の成績が本来もっと悪かったとして、それを補うような勉強が得意なやつが教えていたとしたら辻褄が合うのではないか。

例えば、そう、目の前にいる西海十李のような。

「春休みに補習に来てただろ、北田。職員室で小耳に挟んだが、結構ギリギリだったらしいな。英語なんてほとんどお情けで合格にしてやったって先生が苦笑いしてたぞ」

西海は、そう言いながら笑顔で片手を差し伸べてくる。

その手は握手を求めているようだった。

これは取引ではない、悪魔の押し売りだ。

「みんなと一緒に卒業したいだろ? 俺でよければ勉強を見てやろうか?」

こいつ、断れないことを知っていやがる。

卑怯者!!

 

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