犬との山暮らしを通してわかったことは、犬が動物として本来の機能を取り戻し、犬として健やかに育つ環境は「山」にあるということです。

都会の学校では、自然公園をめぐる「お散歩会」という活動をしていましたが、移転後はお散歩会がお山歩会へと形を変え、自然との関わりを通して学ぶために自然環境で過ごすクラスを増やしました。

都会の家庭訪問レッスンと山の学校でのクラス活動のために、都市と自然という極端な環境の行き来が続きましたが、このことが犬への学びを加速させました。

さらに、犬が山で五感を超えて感じているものを共感したいという思いで、自分も動物だと意識づけて山で暮らしました。

この体験により、それまで知識に囚われていて見えなかった犬の本質が、はっきりと見えるようになりました。

セミナーや本で得た知識を教えていた時代から、自然の中で犬と共に自分の感性を磨く、 奥行きのある学び場へと変化しました。

犬に対する思いは全く変わっていないものの、結果的にしつけやトレーニングの内容は大きく変わりました。

犬の問題行動の相談は、無駄吠えや咬みつき、散歩ができない、留守番ができない、排泄の失敗など多岐にわたりますが、どれも犬には責任はありません。

犬は飼い主を困らせようとして問題行動を起こしているのではなく、犬の中に生じる違和感、飼い主との関係で生じる葛藤を表現しているにすぎません。

しかし、犬のトレーニングは犬を変えることではありません。変えることができるのは、犬ではなく犬の育つ環境と飼い主との関係性だけです。