【前回の記事を読む】「どうだ!営業って楽しいんだよ」「はい!」——社員の目を輝かせ、納得させた監査役の営業術とは?
第四章 不運が招いた縁
あら、丈也さんが帰ってきた。
「香子、ただいま!」
「お帰りなさい」
ご機嫌だ。抱き付いてくる。
「どうしたの」
「三階堂、営業魂を湧き立たせるなぁ。面白い。会社は営業が明るいと、数字もついてくるし、会社全体に活気がでるんだ。いい傾向だ」
「そう、良かったね。今日は大好きなお魚のお汁よ。美味しそうなぶりのあらがあったの。それと、日本酒があります」
「早く、風呂に入ろうか」
と、服を脱ぎ始めている。風呂上がり、日本酒と鯛のお刺身といかの塩辛、キムチ。ゆっくり食べている。
ぶりのお汁にヨモギを入れると、香ばしくて美味しい。丈也さんも大好きだ。
「ねぇ、そろそろ、お汁入れましょうか」
「そうだな、これ以上飲むと、明日に残りそうだな」と言うので温かいお汁を出した。
「う~ん、旨い! 香子、最高だ。疲れた体に、浸み込んでいくなぁ。君のようだ」
「なんですか。それ」
「最高という意味だ、僕の奥さんは。アハハハハハ」
凄く、ご機嫌。
ある日、些細な事で、ケンカをした。久々の冷たい戦い。
行ってらっしゃいのキスもしない。話しかけないし、無視していた。
三日目、丈哉さん、つい、
「香子、お茶」と。私は無言で、お茶を置いた。ありがとうとも言わない。