{夏休み}
夏休みは予想以上の地獄の猛特訓…3人の主観だが…であった。
日曜日を除く毎日午後、台風が近づいても雨にも負けず風にも負けず、更には光って数秒後に雷鳴が轟こうが雷にも負けず、夏の暑さにも負けない丈夫な身体をもって、いつもプールで泳いだ。
夏の練習ピークともいうべき小1週間の校内合宿は、校内の宿泊施設を利用し、朝食前・午前・午後の3部構成でとことん泳ぐ練習であり、先輩たちも続々と激励(稀に現役時代に課された猛練習の復讐とばかりの後輩シゴキ)に駆けつけてくれる目玉行事でもある。
毎朝その日初めて入水したときは、「夏はプールが最高」と青春そのものを感じてしまう部員たちがいたが、キックやプル、インターバル、ロング、ダッシュなどを25mプールで何本も何本も繰り返しているうちに、今、何をしてるか分からなくなり、何とかこなして練習が終わりそうになる頃には、「プールがこの世から無くなるなら、命を差し出します」と、悪魔との取り引きに自らを捧げたくなる毎日の繰り返しだった。
一方で、そうした辛い練習の中に些細な楽しみもあり、先輩たちが次々と差し入れてくれる大きな西瓜を、プール隅っこにぷかぷか浮かせて冷やし(炎天下で少し生温かったが)、練習終了後にプールサイドで車座になって、みんなでかぶりつくと、へとへと顔だった彼らに戻ってくる笑顔が、夏の夕日に照らされてキラキラ輝いた。
夏休みも終盤になり、辛い練習を耐えに耐えてきたフィナーレともいえる十校戦が2日間にわたって開催された。
地獄の猛特訓の甲斐ありで、各自がベスト記録を次々更新した。が、他校も同じように、というか、地獄以上の猛特訓をしていたらしく、学校対抗としての順位的にはいつもよりは上位に食い込んだが、その域は出なかったものの、部員がこれまで以上に決勝レースまで残ったことを互いに喜んだ。