【前回記事を読む】現状打破のため立ち上がった水泳部。コーチ任せだった練習に、部員たち自ら発案した取り決めを入れることに…

〈序章 202×年3月某日(土曜)昼過ぎ〉

〈高校2年生〉

{ある日の部活(白川朗子)}

(3)練習の締めは「ラスト5メートル!」(提唱者:白川)
「レースを決着させるのは、最後の5mからどれだけ泳ぎ切れるかである」との、あのシェーン・グールドも教えたとかいう豪州コーチの言葉から着想を得たもので、毎日の最後の締めの練習として、1コースにその週のベストタイムの最も遅い者が、2コースには次に遅い者が、……と7コースまで順々に並び、タイム差をハンディにして、次々と飛び込んで100mをダッシュで泳ぐことにした。

[なお、少し導入経緯に触れれば、この3つのアイデアに対し、「自分の練習計画に不満なのか?」と、チーフコーチは当初はネガティブであったが、

以前にチーフコーチの経験もあった重鎮のOB(ミュンヘンオリンピックの時、スタート号砲が鳴ると同時に校内プールに飛び込み、奮闘むなしく遅れてゴールしてから、「金メダルを逃した」と悲しそうにつぶやいたという噂を持つ伝説の人物)が顔を出した際に「試行だと思って、とりあえず取り入れてみたら」と言ってくれて実現した]

「今のこのままの水泳部でいいの?」を合い言葉に、マネージャーも含めて全員一丸となって練習に取り組み、2年生の夏休みを迎えた。