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本日の宿は中標津町のビジネスホテル。友人や家族との旅行なら温泉宿か観光ホテルに宿泊したと思うが、そういった宿で1人で夕飯をとるのも寂しいのでビジネスホテルに泊まり、夕飯は近隣の居酒屋でとることとした。
予約したホテルについてみると、驚くほど「昭和」な雰囲気を感じさせるやや薄暗いホテルだった。事前に調べておいた居酒屋候補2軒の評判をホテルのフロントの方に聞き、それ以外に良さげな店1軒の情報も得た。
どこにするか迷ったが折角、現地で仕入れた情報なのでフロントで教わった店に行くこととした。教わった場所は、表通りから1本入った路地に面した古びた雑居ビルの1階。このビルにはネオンサインが5~6個あるが、2個しか電気がついていない……。
1階は真ん中に薄暗い蛍光灯が灯る通路があり、その通路の一番奥に探していた店はあった。推薦がなかったら絶対に入らなったと思うが、意を決して引戸をガラガラと開けた。
中は意外に広く、カウンターには誰も座っていないが、奥の座敷には2組の団体が宴会を行っていた。カウンターの一番奥に座り生ビール(サッポロビールじゃない……)を注文し、メニューを見る。焼き鳥などの肉系のメニューもあるが目もくれず、海鮮系を吟味する。
1人なので半分程度の量で多くの品数を注文したい方針を伝え、了承を得た。お造り盛り合わせ、鮭ハラス炙り焼き、こまい一夜干し、とうきびのかき揚げ、葉山葵醤油漬け、最後にイカゴロ味噌焼きを注文することとした。
イカゴロ味噌焼きを注文する前の段階でどれも美味しかったが、特に、こまいの一夜干しが半生っぽくて一番美味しかった。この店の売りが一夜干し系であることに気が付くのが遅かった……。まこがれいの一夜干しも食べたいが、イカゴロ味噌焼きは絶対に外せない。
既にお腹がいっぱいで2つは食べられない。安易に最初にお造りなど頼むべきではなかった……。お酒は、根室の酒「北の勝」の300mlの小瓶があった。中標津と根室は100km程度の距離しかなく、大雑把に言うと道東エリアの地酒と思えるのでこれを飲みたかったが、残念ながら純米酒ではなかった。
それなりの量を飲もうと思っていたので、二日酔いのリスクを回避すべく断腸の思いで止めておき、仕方なく本州の日本海側の純米酒「〆張鶴(新潟)」「黒龍(福井)」「黒帯(石川)」でリレーすることとした。
札幌などで道産酒を多く揃えている店は観光客が多く訪れる傾向があると思っていて、そういう意味ではこの店は地元の方が集う店なのだろう。いつの間にかカウンター席も埋まり満席状態となったが、皆、馴染の客っぽく「よそ者」は私だけだったように思う。
日本酒は翌日残りやすい酒といわれていて、特に純米酒でない醸造用アルコールが入っているものは残りやすいようだ。よく日本酒を飲む際に、オンザロックの蒸留酒を飲むときのようにチェイサーを頼み、お酒と交互に飲む人がいる。
そうすることにより二日酔いになるリスクを回避しているのだが、私には絶対できない……。
せっかく美味しいお酒の余韻が舌に残っているのに、それを水で洗い流してしまうなんて……。
酔いも大分回り、お腹も一杯となったので退散することとした。生きているうちにもう一回くらいこの店に来ることがあるだろうか……。未だ、まこがれいの一夜干し食べてないし……。

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