【前回の記事を読む】コロナ禍を越えて再び道東へ――成長した角を誇るエゾシカに出会う旅が始まった

[第一章] 道東の秋 2022年10月7日~10月9日

1.サイレントグリーン(神の子池、野付半島ナラワラ) 2022年10月7日

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昼食後、国道272号線から国道244号線を経由して、北海道道950号野付風蓮公園線に入って間もなく、早速、右手の草原に恰幅のよい角の大きなエゾシカを発見した。

明るい茶色の夏毛からこげ茶色の冬毛に生え変わっていて、その上に微かに白い斑点が見える。車を路肩に止めてカメラを取り出し、草原に入り、望遠レンズでシャッターを切る。

より大きく被写体を捉えようと近づくと、トコトコと逃げてしまう……。やや逆光だったので反対側に回り込んで撮影し、まずまずの写真が撮れた。

再び車を走らせトドワラまで行き、少し引き返す感じでミズナラが立ち枯れている風景が特異なナラワラの展望駐車場で車を止めた。

トドワラでは、親子のアザラシがニコニコ笑っている絵が描いてある、北方領土返還を訴えるお馴染みの看板を目にした。この看板を見ると「道東に居るんだな……」と思う。野付半島から約30km海の向こうには国後島があるのだから……。

バッグを担いでナラワラを見渡すと、30ⅿほど離れたところにエゾシカの家族(角がある雄1頭、雌1頭、子供が2頭)がナラワラの森と湿地の境目辺りに出てきていて、此方をうかがっている。カメラを構えて2回シャッターを切り、それから数歩近づいたら森の中へと逃げてしまった……。

再びエゾシカに遭遇する機会を待ったが、叶わなかった。

車に戻り、北海道道950号線を戻っていくと、道路をスタスタ歩くキタキツネを見つけ、車を止めてカメラを向けた。彼は私の前で立ち止まり、お座りしてポーズをきめてくれた。

子供の頃、サンリオがつくった『キタキツネ物語』(1978)という映画を観た。キタキツネの子供達が北海道の大自然の中で生き延びていくドキュメンタリー映画だったと思うが、この映画を見て以来、キタキツネが大好きになり、道内で彼らに出会うとつい嬉しくなってしまう。

キタキツネは都市近郊にも生息していて、私が札幌の大通り西20丁目に住んでいた時、北海道神宮の敷地内を散歩中に彼らに出会ったこともある。

また仕事の会合で話した方から聞いたのだが、札幌の宮の森という住宅地の庭にキタキツネが巣をつくり、子供を産んで困った所有者は保健所に相談したところ「しばらくすると巣立っていくのでそれまで待ってあげてください」といわれたそうだ。