「はっ、また御大層な。……そうだ、俺が宅急便として届けてやるよ。その女の家に」

「え?」

「人の恋路の邪魔をするなって言ってやる」

俺に任せろと言う長澤さんに、私は悩みながらもお願いをする事にした。それで悠希さんが諦めてくれたら、と淡い希望を持って。

翌日、その淡い希望は、悪い、という長澤さんの言葉で、打ち砕かれた。

「あの女に、『私と俊雄さんは前世から結ばれる運命だった』って言われて、頭がおかしいとか思ってしまったけど、どうも、有名な占い師にそう言われたらしく、強く信じてて、俺の言う事なんて聞く耳持たなくて。押しというより、執着? 思い込み?みたいなのを凄く感じたよ」

「……そうですか」

「でも、それでも好きな女のために、振り切るのが男ってもんだ。彼氏にもそう言ってやりな」

「……はい」

悠希さんに泣かれて、オロオロしてしまう俊雄さんの姿が浮かんでしまう。優しい俊雄さんだけど、男らしい面を出して欲しいとこだ。

私も、俊雄さんと一緒に対策を考えた方が良いだろうか?

ずっと俊雄さんに怒りをぶつけてきたけど、長澤さんの話を聞いて、俊雄さん一人に押し付けず、私も協力した方が良いように思えた。

夜になり、自分のアパートでスマホと向き合う。数分そうした後、私は勇気を出して俊雄さんにLINEを送った。きちんと話し合いたいと。

返事は直ぐにきた。今から家に行って良い?と訊かれ、私は了承した。

十分後、インターホンが鳴って俊雄さんが現れ、ドアを開けるなり抱き締められる。

「LINE、嬉しかった。僕が情けないばかりに、本当に悪いと思ってる」

「……とりあえずあがって」

「……亜紀を感じたい……!」

「俊雄さん……」

それは私を抱きたいという、いつもの台詞だった。

わだかまりが無くなった訳じゃないけど、俊雄さんの声を聞いて、匂いに包まれて、私も俊雄さんを感じたいと思い、頷いた。

お互いの温もりを感じた後、悠希さんがお店に来た事を話そうかどうしようか迷ったけど、気を遣わせて悩ませるのは嫌だったので、黙っておく事にした。

彼女は買った服を彼にプレゼントするのだろうか。そして、俊雄さんは悠希さんからプレゼントされたら、受け取るのだろうか。そこだけは気になった。

でもそれ以前に、悠希さんの対策だけは俊雄さんと考えないといけないと思った。

これ以上、関係が拗れないように……俊雄さんを信じて――。

次回更新は11月16日(日)、19時の予定です。

 

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