2 恩師とともに――「吉田茂邸」散策――

今(平成21年)から三十数年前のことになる。大学に入学したものの受験勉強の反動もあり教養時代は今一つ講義に熱が入らなかった。友人と雀荘や喫茶店で暇をつぶしたり、下宿で酒を飲み明かし生意気に「青春や人生」を語ったりした。

今から考えると気恥ずかしい限りである。基礎医学に入る前よりそろそろ真面目にやらねばと思い直し、また医学に少しずつ興味を持ち始めていた頃でもあった。

講義が終わった休み時間に校舎の外を眺めていたら、二人の白衣を着た教官が犬を散歩させていたので、近くまで行き「何をしているのですか?」と尋ねると、実験犬を躾けているとの返答であった。

半信半疑のまま一緒についていったのが薬理学教室の研究室で、これが当時助教授のM先生との出会いである。その後、先生には講義や学生実習等でお世話になったが、卒業するまで研究室に自由に出入りさせてもらった。

特に研究するでもなく遊びに行く程度で、教官と学生の関係を続けることができたが、これは先生の人間としての懐の深さと京都人らしい柔らかさに惹かれたためであろう。その後、小生の結婚式に出席をお願いし、手紙のお付き合いや関西に出掛けた際、夫婦で食事をともにするなど家族的なお付き合いをさせていただいた。