マイナスからのスタートだった。

お母様はある宗教の熱心な信者で、特別なご本尊をいただいていた。

私は宗教は無理だからと彼に強く言ったものの、大丈夫だからと言われ、彼を信じた。彼自身宗教には入っておらず、ただお母様の仏壇を守ってほしかったのだった。

嫁に行った家の仏壇を守るのは、私は当たり前だと思っていた。確かそれとなく私自身の親にも教えられた気がしていた。朝晩手を合わせるだけで彼は嬉しかったようだ。

それ以外宗教とのお付き合いは、ほとんど社交辞令程度のものだった。ただ、かなりお世話になってしまったので、ある程度は従うしかなかった。

とにかく、この宗教の方にはお世話になったものの、ただ少しずつお従いするのみで、何せ何のお返しもできない状態だった。私は、宗教自体に感謝のお返しをしたので、それでいいと思った。本当にありがたいとは思っていた。

よく訪ねてくださりお茶を飲んだ。2、3人が家に上がり、いろいろ子育てのこととか教えてくださったり、いろいろありがたかったのも事実だが、そんなある日、さりげなく

「あなたは人のありがたみがわからないんじゃない」と言われ、ズシーン!! ああ―― 。

思わず、「どうぞ、おひきとりください」と言っていた私だった。

それでも帰ろうともしない人たちだった。心の微妙な感情を察することのできない人たちだった。

自信満々、まして、ひとりでなく大勢だから強い。ただし、“人には言ってはいけないことがある”。

それからは、今までニコニコしていた人たちが、みんな人が変わったように接するようになった。本当にこれは体験した本人にしかわからない話だ。母である私の苦しさに、我が子(赤ちゃん)はずっと泣いていた。もちろん、おわかりになる方もいらっしゃるとは思うが。

しかし、私はむしろ、その皆さんより上にいなければいけない気持ちで堂々としていた。というより、そうする努力をした。