所要プレストレスは,この合成応力度の分布状態が設計で必要とされる制限の範囲内であるように調整して算定する.
実際の設計では,PC鋼材の本数(緊張力),部材の断面内に配置する位置(偏心モーメント)を勘案して,経済的なプレストレスが得られるよう配慮することになる.
よって,荷重の作用により,部材上縁側に生じる合成応力度(圧縮側)より,部材下縁側に生じる合成応力度(引張側)が制限値(許容応力度)に対して最も余裕がない断面を設計断面の対象とし,プレストレスを算定する.
1 . 3.プレストレスの方式
鉄筋コンクリート部材にプレストレスを導入する方法では,プレテンション方式とポストテンション方式がある.
これらは,プレストレスを導入する時期が異なり,使用するPC鋼材の種類,PC鋼材の定着工法,適用できる構造物などに大きな違いがある.したがって,設計の段階では,材料調達の可否も含めた種々条件を勘案し,最適な方法を選択する必要がある.
(1) プレテンション方式
プレテンション方式は,部材のコンクリートを打設する前に,あらかじめPC鋼材を緊張しておく方法である.この方式は,鉄道のコンクリート枕木などのような工場製品に適用されたのを皮切りに,品質向上,標準化,大量生産を実現するなど,PC製品の普及に大 きく貢献した.
本方式は,製品の長さに応じて配置された反力設備(反力台)の間に比較的細径のPC鋼より線を多数配置し,その反力台の間に鋼製型枠を必要な数だけ設置して,同一形状の断面を有する部材を同時に製造するものである.
プレストレスは,あらかじめ所定の緊張力が与えられたPC鋼材と鋼製型枠内部に打設されたコンクリートの硬化とともに生じる付着力によって得られる.