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家政婦によって発見された老主人の遺体は、不気味な光を放つ細い円筒形の消音器が装着された拳銃で、頭を右側から打ち抜かれていた。机の上一面に ばら撒かれた、夥しい数の真っ赤なカラーコピーの上には、べっとりした赤黒い液体が流れ出して広がり、それはカリン材で寄せ木された床の上にも滴り落ちていた。

拳銃にはまだ三発の銃弾が込められたまま残っていた。そのほか、直前に主人が飲んだと思われる空のショットグラスが、机の左端に置かれていたのだった。

玄関の扉がこじ開けられたというような形跡はかった。また、抵抗した痕跡も見られなかったし、 室内も荒らされた様子はなかった。警察から事情聴取を受けた家政婦の証言から、今朝、間違いなく彼女自身で鍵を開けて室内に入ったことが確認された。

つまり扉はきちんと施錠されていたということである。

だから通常であれば自殺と見なされるケースかもしれない。しかし警察は他殺の線も同時に視野に入れ、手がかりを求めて部屋中をくまなく調べ始めた。結局、不審な遺留品と見なされるものは一切発見されなかった。

もし他殺であれば、犯人は合い鍵を使って侵入したのだろうか?

さもなくば、犯人は主人とは顔見知りの間柄で、内部に招き入れられた後、突然犯行に及んだものだろうか?

さらに調査を進めた結果、主人のものらしいキーホルダーについた鍵が、居間から発見された。同時に書斎の棚からも、恐らくこの家の合鍵だろう、それと全く同一のものが一個発見された。鍵は通常三個で一組のものだから、もしそうだとすると、家政婦のものを含めれば合計三個で数が合う。

しかし、もし合鍵を含め、もともと四つの鍵があったとしたらどうだろうか?

犯行後、殺人者はそのうちの一 個を使い、廊下側から扉を閉めて逃亡したとも考えられた。刑事はその鍵のメーカーや、工事を担当した施工業者に、ワンセットの鍵の個数はいくつなのかを念のため確認しておくように部下に指示を出した。

指紋の検出も注意深く行われた。こちらの方は一両日中に主人と家政婦以外の指紋がどのくらいある かわかるだろう。しかし照合には最低一、二週間はかかる。残された足跡の痕跡の扱いも同様だが、室内ということでもあり、こちらは指紋と違って採取が多少困難だった。