「でも、カッコイイだろう」

「はぁ~ん、嫌だ、シロだ」

「ダサいよ」

「いいや、シロだ」

「幸也、父さんが呼びやすい方がいいだろう」

二人の手が止まった。

「丈哉、ようやく父さんと呼んでくれたな。ありがとう」

「ええ、どうして。僕はいつも思っていたよ」

「丈にぃ、遅いんだよ」おじ様、泣き笑いしている。

キッチンから見ていた叔母様も、エプロンで涙を拭いている。

「丈哉、ようやく、主人を父さんと呼んでくれた。嬉しい」

外では、おじ様、幸也さんが名前の事で、バトル中。

「姉とね……丈哉の母親が亡くなる間際に、こんなやりとりがあったの。

『みっちゃん、幸雄(ゆきお)さん、丈哉はもう四十四だけど、まだ四十四なの。千賀(ちか)があの性格でしょう、気が強くて、わがままで。それが嫌で丈哉は東京へ出たの。母親の愛情が足りないと思うの。だから、あなた達夫婦であの子の親になってくれる?』

『姉さん、丈哉は任せて大丈夫よ』

『ありがとう……』

『母さん! 母さん!』

そこへ丈哉が病室に着いた。

『ああー、丈哉、私の可愛い丈哉、私の子に生まれてくれてありがとう。愛しているよ』と。

それが最後のお別れだったの」

私は嗚咽で苦しかった。でも丈哉さん、叔母様ご夫婦がいてくれて、本当によかった。

次回更新は9月25日(木)、22時の予定です。

 

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