【前回記事を読む】見たこともない黒塗りの、車体の長いリムジンが実家に横付けされた。腰を抜かしてひれ伏す父母を前に、会長が…

第一章 私の社会人経験

運命的な出会い

その当時は店舗を休んでバス数台を貸し切って熱海に社員旅行に行っておりました。お前は少し生意気だからという理由だったと思いますが、みんながやりたがらない1号車のリーダーに任命されました。

どうして1号車が敬遠されるかは後でわかりました。松本寿子会長が乗車するからです。私はこれをチャンスだと思い何とか会長に楽しんでもらおうと熱海の観光ブックを3冊買って隅から隅まで読んで参加していました。バスガイドさんもいましたが今思うと道中私が全て説明していました。トイレの場所、途中立ち寄るサービスエリアでの名物。

その晩、何百人という社員が一堂に集まり大宴会が始まります。その第一声が会長の挨拶です。今日は私が今まで社員旅行に来た中で一番楽しかった。1号車のバスのリーダーのいしわら君はどっかにいるかい?と声がかかりました。

その時私は一番後ろの席で明日の道中の予習をしていたのです。周りがざわめき、おい、お前の名前が呼ばれたぞ! 早く立て。ハイと立ち上がると「あっいしわら君、ありがとうね。とっても親切にしてくれて、楽しかったわよ」と、みんなの前でほめてくださいました。

この瞬間に寿子会長と死んだてるおばあちゃんが重なり、てるにできなかったおばあちゃん孝行を会長にできたらいいなと思いました。

2日間のバス旅行も終わり、最後に何かあったら何でも電話してきなさいと直接電話番号を頂きました。それから1年後、またバス旅行の時期。私は2年連続で1号車のバスリーダー、その時にはもう吉祥寺店の店長となっており、新人がバスリーダーをするという定例は覆り私がまたやることに。

吉祥寺には小ざさの羊羹という幻の羊羹があります。これはお金だけでは買えなくて、当時前日の夜中から朝まで並んで、朝に番号札が配られて先着50名。この幻の羊羹を是非会長に食べていただきたいと、吉祥寺店のスタッフが並んでくれました。

朝、会長に会うや否やこのエピソードを会長に伝え、私が並んだわけではありません。うちのスタッフが是非会長に食べていただきたいと並んだ幻の羊羹がこれです。とお渡しすると、寿命が延びるね、せっかくだから1号車に乗り合わせた全員に一切れずつ差し上げて、と。