【前回の記事を読む】【伝説の超大陸】6000年前の地球は今よりも温暖だった!? 気候変動と海面変動の歴史から見えてくる未来の海岸線とサンゴ礁の真実とは
第一章 伝説の大陸と最終氷期の大陸
二 最終氷期の海面変動と沈んだ大陸
サンゴ礁の沈降と礁の厚さ
現在分布する島や大陸縁辺に発達する多くのサンゴ礁は最終氷期以降に形成されたもので、そのサンゴ礁の厚さと礁湖の深さが調べられました。
今から九〇年前、アメリカのデイリーは『氷河時代の変貌する世界』【4】という本の中で、環礁のサンゴ礁の基底が多くのところで平坦な島棚であり、またその礁湖の深さが海面から約一〇〇メートルかまたはそれ以下であることを述べました。
そのことから、デイリーは、環礁の島々が海面に対して一斉に沈降したとは考えられず、環礁のサンゴ礁が最終氷期以降の海面上昇によって上へ上へと成長したものであると結論づけました。
このことは、最終氷期以降の海面上昇が約一〇〇メートルあったことと、サンゴ礁の厚さがその場所での海面上昇の大きさを表すことを意味します。
最終氷期以降の場合、そのサンゴ礁の最大の厚さが約一〇〇メートルだったところは、その場所が沈降や隆起をしなかったことを意味し、一方それよりもサンゴ礁の厚さが薄いところはその分の島や陸地の隆起があったことになります。
ダーウィンはサンゴ礁が裾礁から環礁へ成長することを島の沈降で説明しましたが、デイリーは島の沈降ではなく、海面の上昇でサンゴ礁の上方への成長を説明しました。
図4 Bは、海面が上昇してサンゴ礁が裾礁から環礁に成長して、さらに急激な海面上昇に追いつけずに海に沈んでしまい、平頂海山(ギヨー)になった状態を示したものです。深海に沈んだサンゴ礁の話は、第四章の「深海に沈んだ大陸」でお話しします。