「そうだなー。精神修行の場。なんていうか、暇。おかげで脚がまだ風邪気味」

みんな笑ってくれた。こうやって心を許せる友達と過ごす時間が「辛いこと」を「辛かったこと」に変えていく。

「あー、しばらく寂しかったぜ」

学校からの帰り道、亮が言う。行きと帰りでは気持ちがまるっきり違う。行きたくなかった学校とすぐにでもまた行きたい学校――

「すまん。といっても俺にはどうしようもなかったけどな」

心に余裕が出てきているみたいだ。

「そういえば、逮捕された翌日、心配でお前の家に行ったんだけど、おばさんたち『蒼斗の面会には行かない』って言ってたんだぜ」

「何で?」

ずっと留置所の中で頭から消えなかったことだ。なぜ、誰も面会に来ないのだろうかと。禁止されているのか、それとも見捨てられているのか。結局考えないようにしていた。

「おばさんさ、『私たちを見たら、これ以上迷惑かけないようにって嘘(うそ)の自白をするかもしれない。だから行かない』って」

言葉の重さを感じた。自白して罪を認めようとした自分が情けない。

「羨ましかったよ。お前のことを信じている親が……」

亮の後ろから夕日が照らしていて表情がよく分からない。微笑む口元だけが見える。

亮の言葉で気づいたことがある。この瞬間までずっと受け身だった。俺を信じて待っていてくれた両親を、まだ満足に安心させられていない。「俺は大丈夫」とも伝えていない。

「じゃあな」

「うん、また明日」

俺は走り出す。胸の高鳴りは良い響きだ。心身の疲れを一切感じず軽快だ。